マルタ 幸せな猫の島
以前、リストマニアを編集した際に、星野道夫さんの作品の美しさを高く評価させて頂いたのですが、この写真集も星野さんの写真集に匹敵する美しい写真集でした。
星野さんの作品と大きく違うところは、新美さんの作品には?悲しみ」がない。かといって、能天気なのでは全く無い。
新美さん御本人が御苦労された事もあったのでしょうか。きっとそうに違いないと思います。
何かまるで全てを知り尽くしているかのような深い静けさが根底に流れています。
でも、この写真集に表現されているのはただの静けさではありません。その沈黙を中心にして、そこから螺旋を描くように解放されていく美しさ、その美しさに到達した喜びがこの写真集には満ち溢れています。
なぜか、この写真集に写っている猫達は、皆、太陽の光を受けて眩しそうに目を細めています。それは、新美さん御自身の眼差しに違いありません。
写真に添えられたエッセイも素晴しいです。エッセイというより、研ぎ澄まされた詩です。
結局、作品なんていうものは存在しなくて、ただ、次々と開くページに作家の魂がころんころんと転がっているだけ。
「日々是好日」と誰かが言ったのを思い出します。まさに、新美さんはその心境に辿り着いています。
宝物になった一冊です。
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